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相合い傘

第3章 戦国無双/石田三成


珠実は清正の元へ走った。部屋の障子を勢い良く開けるが、清正はいない。

外へ出かけるのを目撃したものがいた。
珠実は夢中で駆け出した。

どこだ。
清正が好きな場所。
3人が好きな場所。






あの日の残像が蘇る。
あの時も、夏の日の夕暮れだった。

本能寺の変、明智光秀という謀反者討伐の後、3人はあの場所で、秀吉様を天下へ導き、守り抜くと誓った。

3人は夕日を眺めながら、あの河原で誓い合った。
そこには珠実もいた。決意した3人の姿を、よく覚えている。



あそこだ。








珠実はあの河原へと走った。
彼はそこで、1人立ち尽くしていた。
夕日が川を照らし水面がキラキラと輝く。
燃えるようなオレンジの夕日を、あの日のように見つめていた。

「清正!」

「たま!お前、1人で来たのか?... ... また、転んで」

珠実の膝に泥が付いている。
珠実は転んだことも忘れるほどに、夢中で走った。
膝に手をつき、息を切らす。

「もう、じっとしてられなくて」

清正は、珠実の乱れた髪を手櫛で直してやる。

「私もね、あの日誓ったんだ。3人を支えるって。だから、どうしても今、側にいたくて」

清正はきっと、辛いだろうから。


「お前... ... 」


清正は、うつむき息を切らす珠実を見つめる。
長い睫毛に、汗が滴っている。
俺のために、走ってきてくれた。

「馬鹿」

彼女をぎゅっと抱きしめた。










河原に座り込み沈む夕日を見つめながら、三成の話をした。

『3人で、秀吉様を守るんじゃなかったの?』
『お前の言う通りだ。それが答えだ』

先の言葉が蘇り、胸に刺さる。



「三成は、何を考えてるのかな」


「... ...豊臣の世を守りたいという奴の想いは、俺たちと同じだ。だがあいつのやり方に、俺と正則は納得ができない」

小さな頃から喧嘩が絶えなかった3人。
2人は案外解っているのかもしれない。三成の考えていること。


清正はただ、沈みゆく夕日を見つめている。
蛍が騒ぎ出す。まもなく、日が暮れてしまう。

「たま、お願いだ。あの馬鹿を、どうか側で支えてやってくれ」

悲しみの中に強い決意を見せる清正の横顔を、夕日が熱く照らしていた。
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