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相合い傘

第3章 戦国無双/石田三成


大丈夫だ。そう言う三成を尻目に、珠実は2人に声をかける。

「私、三成と先に帰るね」

三成の、はぁというため息が耳に入る。
良かれと思ったことが裏目に出たらしい。

「... ... ああ」
「... ... おう」

2人の快くない返事が返ってくる。
こうなることを見越して、三成は大きなため息をついたのだった。
















三成、清正、正則の3人は、小さな頃からいつも一緒だった。
三成は武働きが苦手だった。
だがその知勇を買われ、秀吉の側で政務を執りながらぐんぐんと成長する。
武勇の清正、正則との思考の差は、少しづつだが出始めていた。
三成は先の世を見つめるようになる。
秀吉の天下統一への道筋。
そして、統一後の秀吉の世をいかに支えるかということ。

秀吉の側にいることが多くなっていた三成は、2人の胸の内から出る嫉妬も感じていた。
そんな現状も背景にあり、珠実と2人きりになる、つまり決め事を破ることは、なおさら避けたかった。
















「三成、ごめん」


帰りも2件の饅頭屋に声を掛けられるが、断って先を急いだ。
三成は一言も話さない。だけど、歩くのが遅い珠実に歩調を合わせてくれる。
怒っては、いないのだろうか。

「三成、ごめんね...
「どうして」

珠実が言い終わらないうちに、三成が口を開く。

「街を歩くのが好きなのだ」

「... ... 街の人の声を聞くと、秀吉様の治めてる世が解るよ。みんな、幸せそう」

「くだらん。治世とは城下の様子だけで解る単純なものではない」

「でも!... ... あのさ。三成は、いつでも誰かのために動いてる。今日だって」

忙しいのに来てくれたのは、きっと私のためだ。
三成が行かないと言ったら、4人じゃなきゃ嫌だからって、私はきっと行かなかった。

「こんなに優しいのに。三成は先ばかり見て目の前を見ないから、だから嫌な奴って誤解されるんだよ」

「余計なお世話だ」

珠実は下を向いたまま歩く。
三成のトゲある言葉が胸に刺さる。
少し、言い過ぎたかなと落ち込む。

「そうだね。ごめん。私はね、ただ、三成にも、目の前の街を見るのも好きになって欲しくて。ごめん... ... わっ!」
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