第3章 戦国無双/石田三成
「そろそろ俺の用事に付き合え、行くぞ」
清正は珠実の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
一目惚れした櫛でせっかく綺麗にといた髪を、台無しにされる。
「あ... ... すまん。つい」
「... ... 清正の馬鹿」
珠実はぷりぷりと歩きだす。
「大馬鹿」
三成もその後ろを付いていく。
正則も腹を抱え笑いながら、その後を付いていく。
「ま、待て!悪かった!」
こんな些細な喧嘩だって、後に振り返れば楽しい時間だった。
もうすでに私は、好きなものたちに囲まれた幸せ者だ。
鍛冶屋に向かう途中も、珠実はあちこちに目を配りながら楽しそうに歩く。
途中2件の饅頭屋に試食をしないかと声を掛けられるが、急いでいるからと断った。
「わっ!」
珠実が武士になれなかった1番の理由。
すぐ、転ぶ。
さっと正則の腕が珠実を支えた。
三成と清正の体も動いたが、今日は1番になれなかった。
筋肉質な正則の腕に包まれる。
パンパンに締まった体は、珠実を優しく支えた。包容力のある、大きな体。
珠実は自分の力で体制を整える。
転んだことが恥ずかしくて、正則の目を見れない。
「... ... 正則、ごめん」
「いっつも余所見してるからなー、たまはよ。気ぃつけろ」
「うん。ごめんね」
「お、来たか」
いつもの鍛冶屋についた。
奥では熱い火が燃えているのか、いつも外より温度が暖かい気がする。
清正は武器を見せ、親方と詳しい話をしている。
正則は、お兄ちゃん!と出てきた子どもたちとじゃれあっている。
珠実は、鍛冶屋にいない三成に気がついた。
外へ出てみると、彼は壁に寄りかかり腕組みをしている。
指がカタカタと動いている。
イライラしている。
「... ... 三成。どうしたの?」
「どうもしていない」
彼は前を向いたまま、私の方を見てくれない。
三成はいつもそう。
嘘をつくときは判りやすい。
「 私が、転んだから?」
「違う。... ... 政務が、残っている」
最近三成は少しずつ、秀吉の政務を手伝うようになっていた。
もしかしたら、重大な案件が残っていたのだろうか。
「三成。先に、一緒に帰ろうか」