第3章 戦国無双/石田三成
珠実はねねに甘え、清正と共に台所を出る。
珠実は興奮が止まなかった。
街に出るのがとても好きだった。
「じゃあ、門の前で集合ね!」
珠実は部屋へ戻り髪を整える。
久しぶりの街だ。
ほんの少しだけ、さっと頬紅と口紅をさす。
今日は、どんな事が起こるだろうか。
門の前に着くと、正則と三成が待っていた。
清正は部屋に武器を取りに行き、布を被せたり銭を用意したりと準備をしている。
「おー珠実!あれ?なんか顔赤くね?」
「馬鹿。頬紅だろう」
「あはは、三成あったりー。2人とも、よく気がつくね」
しばらくすると武器を抱えた清正がやってきた。
「たま、顔赤くないか?調子、悪いのか?」
正則が、こいつ馬鹿だと腹を抱えて笑う。
おまえも一緒だと三成が突っ込む。
清正は、何のことだと困ってる。
喧嘩も多い3人だけど、
私は、この仲間といる時間が楽しい。
街の明るいざわめきを聞くと、まるで自身がこの街を支えているかのような気持ちになる。
それは、この頼もしい3人がいつも側にいるから。
「清正、私は大丈夫。行こう!」
街にでる。
6月だが、空は晴れ。
蒸し蒸しとした暑さが、また雨を呼ぶ事を予感させた。
鍛冶屋への道は、茶屋や小物屋、賑わう通りを歩いていく。
商売屋は顔を覚えるのが得意で、子飼いの一味、とりわけ珠実にはよく話かけてくれた。
「あら、たまちゃん。新しい櫛見てかない?」
「見る!」
武功をあげることのない珠実の買い物はほとんどが試して眺めるだけの冷やかしだったが、商人たちは珠実の意見を求めた。
また始まったと、後ろで三成のため息が聞こえた。
だが興奮の冷めない珠実の耳には入らない。
珠実は並べられた櫛に見入る。
中でも、赤の下地に花の模様があしらわれた櫛が気に入った。
「今日の品揃えはどうだい?」
「うん、良いのばっかり。どれも大人っぽい」
珠実の瞳がらんらんと輝いている。
珠実は櫛を日にかざして透かしてみたり、髪に通してみたりする。
好きなものに囲まれる生活はどれだけ幸せなのか、想像してみる。