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相合い傘

第2章 戦国無双/織田信長


更に月日が経つ。
あの日から信長の目が変わった。
髪も伸び無造作な髷を結わえ、髭を生やしている。
私の知ってる、信長じゃない。

その代わりに、尾張の国は信長の力でメキメキと大きくなっていくこととなる。
織田領に居れば安泰だとの声もあれば、残虐な行為の噂も舞い込む。

私は彼に会う時間がなくなった。
私はそんなこと、望んでいなかった。





そのうち、私も嫁に行くこととなる。
敵国の武将の御目に適い、娶られることとなった。
ただの町娘の私を娶ることが、同盟を結ぶ条件だったらしい。異例だった。
信長の耳にも入っただろう。
だが私は、誰に止められることなく敵国に娶られた。

信長は私のことを、忘れてしまったのだろうか。
もしかしたら、あの日体を重ねた事も、こっそりと会ってくれていたことも、あの日願った相合傘も、ただの遊びだったのかもしれない。
そう思えば、いくらか気が楽になる。













敵国で過ごす日々は退屈だった。
国独自の慣習を覚えることも気だるく、地方の方言もよく解らない。




嫁いで間もなく、信長から献上物が届いた。
珍しい舶来品。
そしてその隣には、丁寧に包まれた、一輪の野に咲く花。

「この花、どういう意味だろう」

戸惑う殿や家臣らの隣で、私は必死で涙を堪えた。

信長は、私のことを忘れてなんかない。







いま、後悔している。
あの日何を望むかと問いかけた信長は、私の意思を聞きたかったのだ。
修羅の道についてくるかと。

もしも「あなたを望む」と答えていたら、今頃私はあなたの側に居れたのだろうか。






その後も献上品と共に、野に咲く花が送られてくる。
あの時の問いを振り払った浅はかな私に、今でも花を送ってくれる。






会いたいよ。
たとえ修羅の道でも、あなたの側に居たい。



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