第3章 夜桜。
「あれ、嘘なんだよね。
彼女いるって言っとけば、大抵の子は本気にならないじゃん。俺、5、6回やると相手に興味なくなっちゃうんだよね。って、ユリに言うことでもないか。
ま、一人に決めるとか無理だから」
悪びれもせず、あっけらかんと話すリュウセイ先輩は、妖艶な笑みで私との距離を詰める。
嘘って……そんなの、今更……。
ずっと今日までだと思ってきたから、頭がついていけない。
固まって口を開くことができない私の目の前15㎝で、彼の顔が止まった。
こんな至近距離で見ても染み一つない透き通るような肌に息を飲む。
頭のてっぺんに冷たいものが落ちたような気がした。
「だから、延長したいんだけど。
こんなの珍しいよ。どうする?
このまま俺の部屋に行くか、ここで別れるか」
どっちでもいいよ。と言いたげな、いたずらっぽい瞳が私に向けられる。
「雨降ってきたよ。
残念だけどお花見は終わりだね」
踵を返した彼と、私の距離が急に離れた。