第3章 夜桜。
途端に強い風が吹いた。薄暗い電灯の下で数えきれない花びらが散っていく。
まるで私の初恋みたいに。
「何で? 俺のこと嫌になった?」心底不思議だ、といった表情でリュウセイ先輩が私の腕を掴んで、ブランコを挟んで向かい合った。
「彼女さん、明日帰ってくるんでしょう。
これ以上付きまとったりしませんから」
しっかりしなきゃ、と思う心とは裏腹に声が震える。
リュウセイ先輩が好き。
私が彼女になりたかった。
先輩の、一番になりたかった。
だけど……なれるわけないよね。
血がにじむほどに唇を噛んだ私に顔を近づけて、リュウセイ先輩はこの場にそぐわない明るい笑顔を向けてきた。
「そうだっけ。
ごめん……」