第4章 散れない桜
彼に告白したあの日から2年の時が流れ、私は留学中の彼女になった。
リュウセイ先輩は眩しいくらいに自由に羽ばたいて、時折お気に入りの枕で眠るために戻ってくる。
2週間に一度の美容室を欠かさない私の髪は、真っ黒な心とは裏腹に艶めいて彼を待つ。
彼が欲しいのは私ではなくて、切る機会を逃してしまったこの髪だ。
リュウセイ先輩が好き。
本当は、私だけの彼でいてほしい。
だけど、現実はこんなもの。
私はただの都合のいい女だ。
リュウセイ先輩のマンションの窓を開ける。
向かいの公園の、散り始めの桜の木が目に飛び込んできた。
毎年儚く散ったかと思うと、翌年力強く咲き誇る桜。
あの時彼を追いかけてしまった私は、満開を迎えることも自分から散ることも出来ない。
そんな日は来ないと分かっていながら、彼の唯一の人になれることを夢見る。
いったい、いつまで––。