第1章 告白。
「2年の花井ユリです。ちょっとお話、いいですか?」
「いいよ、こっちおいで」と校舎の裏へ連れて行かれた。
人気がなくて校庭の喧騒が嘘のように、ひっそりと静まり返っている。
「で、なーに?」
こんなに近くで先輩の顔を見るのは初めてで、緊張に心臓が耐えられない。くっきりをした二重瞼の下の、黒目の大きな瞳に私が映る。
黙ったまま固まる私の様子を、先輩は退屈そうに眺めている。
「あ、あの。私、先輩にずっと憧れてて……。す、好きです‼」
待たせては申し訳なくて……思い切って告白するしかない。
リュウセイ先輩は目を細めて私の髪に手を伸ばす。子犬にでも触れるみたいに優しく撫でた後「ふーん」と呟いた。
「今日、告白してきた子君で三人目。
……俺、彼女いるんだよね。
今留学中だけど1ヶ月したら帰ってくる。
1ヶ月だけ、彼女になる?」
いたずらっこみたいな笑顔の破壊力は満点で、私の首は勝手に前に倒れる。
だってたとえ一時的でも、この人を独占できる誘惑に勝てるわけなんかないよ……。