第1章 告白。
くしゃみを一つして、空を仰ぐ。
真上の桜の木は蕾がちらほら見えるぐらいで、私の天敵はその隣の杉だった。
「くしゅんっ」
うう、鼻水出してる場合じゃない。
今日は3年生の卒業式。
先輩の、学ラン姿が見れる最後の日。
私がずっと片思いしてきた水瀬リュウセイ先輩は、イケメンで人気者で、遊び人と噂の人。
相手にされないのは分かってるけど、想いだけは伝えたい。
卒業生と在校生に次々に声をかけられ常に輪の中心にいる先輩。斜めに流した髪が風になびいて、長身が際立つ。
学ランのボタンはすでに、ひとつ残らず無くなっていた。
やきもきしながら先輩を目で追っていると、強く吹いた風に髪が煽られる。腰まで伸ばしたストレート。
先輩に振られたら……切ろうかな。
そんなこと考えている場合じゃない。
先輩が一人になった。今がチャンス‼
「水瀬先輩」
「ん?……君、誰?」
トイレの前で待ち伏せして、やっと先輩を捕まえた。