第8章 覚悟と決意
「室ちんッ!」
そう、氷室が先に動いていた。氷室は自分の持っていた刀を赤い瞳の光瑠に向かって刺そうとしていた。それに気付いた赤い瞳の光瑠は、刀を振り下げることなく素早く優花から離れる。
「……俺の行動を読み切るとは、お前はそれなりに動けるようだな…。」
氷室の行動を褒める赤い瞳の光瑠。その隙に、攻撃を仕掛ける賢次だったのだが、それをいとも簡単に受け止めてしまう赤い瞳の光瑠。その距離から賢次の刀術が発動する。零距離からだから、さすがの赤い瞳の光瑠ですら、避けられない筈だ。
ドーンッ!と大きな爆発音を出して、赤い瞳の光瑠が吹き飛ぶ。だが、吹き飛んだだけで、とくに何も事もなかったかのような表情をしていた。倒れることもなく普通に立っているのだ。流石の賢次でも、驚いていた。
「何故…あの距離だったのに……。」
「俺を甘く見られては困る。何よりもお前の主ではないか。」
「確かにそうですが、いくらなんでも……有り得ないことです。」
赤い瞳の光瑠は、無表情のまま刀を構える。
「この体は、アイツのだ。悪いが、怪我をしても俺には痛みを感じない。痛みはアイツにだけにしか、伝わらない。」
そして、無表情から僅かに口元を釣り上げる。それはまるで、この状況を楽しんでいるようにも見える。賢次が、赤い瞳の光瑠に攻撃をしても、赤い瞳の光瑠が苦しむのではなく本当の光瑠が苦しむと言い出す。
「そ、そんなの……可哀想だよ!!」
「テメェ、最低なやつだな。」