第7章 破壊衝動
「私が光瑠様を?そ、そんなことできません!」
震えていてもきっぱりと答える優花に対して、光瑠は柔らかな笑みを浮かばせる。
「頼むよ、優花。俺が俺じゃなくなったら、もう遅いから…。そうしたら、俺じゃない俺が皆を殺しちまう。辛いのは分かる。」
光瑠の声はとても優しかった。しかし言葉は、残酷だ。優花は、一度歯を噛み締めば、やがて顔を上げて真剣な瞳で光瑠を見る。
「…畏まりました。光瑠様の御命令しっかりと承りました。」
「……あぁ。本当にすまない。ありがとう。」
優花の言葉を聞いた光瑠は、安心したのか微笑んでいた。光瑠は、持っていた刀を鞘にしまう。氷室は、光瑠に尋ねる。
「さっき言ってた、俺が俺じゃなくなる…とは?」
「……そのままの意味だ、氷室。」
氷室の質問に少々、辛そうな表情をしながら答える光瑠。まるで、本当の自分を見失うような発言でもあった。夜空を見上げれば、そこはキラキラと綺麗に輝いている星や月が4人を見ていた。
「恐らくだが……柚姫も同じだ。」
「それって、柚ちんが柚ちんじゃなくなるってこと?」
紫原の質問に、素直に頷く光瑠。その言葉を聞いた優花は目を見開き驚きを隠せない。光瑠は、苦笑をしながら左手で頭を軽く抑えては、視線を地面に向ける。
「ワケが分からないんだよ…。意識が途中で、消えちまう。……何もかも壊したくなるんだよ。何か、あったら遅い。だから、優花に頼んだ。」