第7章 破壊衝動
何かが可笑しいというのは、薄々皆は、気づいてはいた。光瑠が動き出した。足に力を入れては、優花に向かって一気に距離を縮める。
咄嗟の出来事な為、氷室や紫原、優花が動けなかった。光瑠は、刀を持っている左手を少し後ろに下げる。そして…優花に向かって刺そうとする。
恐怖を覚えた優花は、咄嗟に目を瞑ることしか出来なかった。そして、ザシュッ!というとんでない音が聞こえてきた。
しかし、優花に痛みはなかった。ゆっくりと目を開ければ光瑠は、違うところに向けていた。優花の後ろに潜んでいた突然変異の狼を刺していた。
「……光瑠様?」
優花は、恐る恐る光瑠を呼び掛ける。瞳を見ればいつもの光瑠だった。光瑠は、苦笑を浮かべてはいたが瞳は真剣なものを表していた。
「…大丈夫か?優花。」
「はい、光瑠様のお陰です。」
優花の返事を聞いた光瑠は、そうか…と呟くように言ってから刀を抜き取る。抜き取れば、ドサッと倒れる突然変異の狼。死んだのだ。やがては、一度光瑠はその狼を見てから優花を見る。
「…優花にお願いがある。」
「私に、ですか?」
「もし、俺に何かあったらお前が持っている銃で……俺のことを撃ってくれ。」
「…えっ…。」
光瑠からのとんでもない発言で、思わず言葉を失ってしまう優花。光瑠の瞳は真剣だから冗談というわけではない。それを感じ取ってしまった優花は、震える声で言う。