第6章 不可解なこと…
「黄瀬、柚姫の言うとおりにしよう。」
「赤司っち…。分かったっスよ…。」
その様子から感じ取った柚姫は、口元を緩めては、辛そうな表情へと戻す。黄瀬の袖から手を放しては荒れた呼吸を整えようと必死になる。
だが、それを許さないのか何かが柚姫を襲う。その度に、柚姫の顔は歪む。全身に何かが這い回る。重い何かが柚姫を苦しめる。
「赤司っち!俺達に何かできないことはないんスか?!」
「………。」
黄瀬の言葉に何も返せない赤司。赤司は、悔しそうに表情をしながら苦しんでいる柚姫を見るしかなかった。
「っ……あ………あぁぁぁ…。」
柚姫は、言葉を僅かに漏らしながらひたすら耐える。
──殺せ。コイツらを殺せば楽になる…。
何故か、柚姫の脳裏から聞こえてくる負の声。思ってもいないのに、そういう言葉が聞こえてくる。声が、柚姫にそう呼び掛ける。
しかし、こんなことで負ける筈もない柚姫だ。その負の声は、もしかしたら自分の心の中だと思ってしまうが、それを自分で否定をする。
──殺しても後悔だけが残る。だから、私は…負けない。
柚姫の強い意志で、その負の言葉を払う。その瞬間、一気に身体が楽になった。荒い呼吸を整えようとする。ひたすら、耐えていた為、嫌な汗が柚姫の頬を伝う。
その汗を拭き取っていく赤司は、苦しそうな表情をしては、柚姫に謝る。
「すまない。俺達が傍にいながらも…。」
「………大丈夫だよ。……誰かがいないよりも心強いよ。ありがとう、征十朗、涼太。」