第5章 籠の中の鳥
「確かに、紫原の言うとおりだ。無理に思い出そうとすると、頭が痛くなるとも聞いた。そして、何よりも混乱すると言われている。」
赤司と紫原の言葉を聞いた柚姫と光瑠は、お互いの顔を見てはクスと笑い分かったとばかりに頷く。
暫くしてからだ。美味しそうな料理を運んでくる火神と洸汰の姿があった。次々と料理をテーブルの上に置いていく。各それぞれ、美味しそうな瞳へと変えて食べ始める。
「うめぇーな!火神って、意外に料理上手なんだな!」
「おい、高尾。意外ってなんだよ!」
高尾の言葉に、怒ったのか火神がそんな事を言っていると、高尾はケタケタと笑いながら悪い!と謝ってくる。そして、1人だけ食べていない人物がいた。
それは、ずっとリビングに立っている洸汰だ。いつも洸汰を含めた部下は、後から食べていた。それが礼儀の作法らしい。
それに気付いた柚姫は、微笑みながら問い掛ける。
「洸汰も一緒に食べようよ。」
その言葉だけに、洸汰は目を見開く。
──ねぇ、修業ばっかやってると倒れちゃうよ!一緒に食べようよ!
過去にも似たような言葉を洸汰の脳裏で思い出す。あの時は、柚姫の守る事を必死だった為、1日でも早く強くなりたいと思っていた洸汰。
だから、お昼の時間をずらしながら厳しい修業をしていた。それに気付いていた柚姫も時間をずらしいては洸汰に声を掛けて、一緒に食べていた。
その関係は、上下関係ではなく幼馴染関係に近いものだった。昔から柚姫は、上下関係をとくに気にしてなかった。