第5章 籠の中の鳥
「だから、私……。柚姫にもう一度会えて良かったよ!」
「………さつき……。」
柚姫は桃井の言葉に、気持ちが温かくなっていく事を感じていた。柚姫は、クスと僅かに笑みを零して流している桃井の涙を優しくすくう。
「…ありがとう、さつき。君の気持ちは凄い分かった。期待に答えられなくてごめんね。大丈夫…記憶はいつか取り戻すから…。」
「それまで、ちゃんと待つから……。もう消えないで…。」
桃井が言った言葉に、一瞬だけ喉の奥から詰まった。そう、記憶がないとはいえ、一度桃井達から消えた身の柚姫。桃井達は、もう二度と柚姫達を失いたくはないのだ。
柚姫は、言葉を発しないまま優しく包むように桃井を抱き締める。まるで、大丈夫だよ…と語るような状況にも見える。
暫くは、落ち着きのない空気だったが、夜になるとだいぶ落ち着きを取り戻し各それぞれ部屋へと戻る。城は元通りの為、黒子達が以前使っていた部屋も元に戻っている。
キセキの世代である皆は、今後の事を話していた。
「なぁ、赤司。どうすんだよ?このままだと、何も変わんねぇぞ?」
青峰の意見に、赤司は腕を組み苦しげな表情を浮かべていた。
「難しいな…。今回は、彼女達は記憶が全くない。何よりもあの鎖だ…。」
「そうですね。鎖によって柚姫さん達は、此処から出られないという話ですよね。」
黒子も赤司と同じような言葉を言う。何も良い提案がないのだ。今の黒子達に何が出来るのか…という問題点が出来てしまった。
「暫くは、様子を見るしかないのだよ…。」
「そうっスよね…。記憶が戻ればいいんスけど…。」