第5章 籠の中の鳥
柚姫の動きが止まった事に気づいた光瑠は、柚姫に問い掛ける。
「どうした?」
「お兄ちゃん……この鎖……。術だよ……。」
「……は?」
柚姫の一言に、光瑠は目を丸くさせる。まるで言っている意味が分からないというのだ。
「私達は、何者かによってこの鎖で繋がれている。この鎖は、その何者かの術だよ。理由はよく分からないけど…。」
「要は、俺達を逃がさない為に使った術って事だな。俺達は、籠の中の鳥ってわけか…。」
柚姫の瞳は、どこか不安と寂しそうに写していた。それだけではない。光瑠も、そんな感じだが苦しげな表情をしていた。だが、すぐに表情を戻してリビングの扉に向かって歩き始める。
「光瑠様、どこへ?」
「あ、悪いな洸汰。暫く、1人にさせてくれ…。多分、部屋にいる。」
光瑠は、皆にそう告げてリビングを出て行った。光瑠の背中は、寂しさが感じられた。何も言えない洸汰は、黙って頷くしかなかった。
やがては、柚姫は黒子達の方を見て言った。
「私達と再会みたいだけど、ごめんね。記憶がなくて…。今は、何も言えない。」
「そ、そんな事ないよ!!」
桃井は、慌てて柚姫の両手を包むように握る。桃井の行動に少々驚きを隠せない柚姫。桃井の真剣な瞳が柚姫を捉える。
「だって、約束したんだよ!また、会おうねって。だから……だから……。」
桃井の瞳から大きな粒…涙が流れ始める。桃井は、涙を流しながらも柚姫に微笑みを見せ掛ける。