第4章 記憶と鎖
この言葉を言ったのは、赤司だ。それを聞いた柚姫と光瑠は、赤司を見る。赤司の瞳は、真っ直ぐで2人を見ていた。揺るぎのない瞳だ。
その瞳を見た光瑠は、ふっ…と笑みを零す。負けたな…と呟くように言って黒子達を見る。
「柚姫、いい。よほど、帰りたくないみたいだ。暫くは、自由にしておくといいかもな…。」
「…分かった。じゃあ、術の方はいいのね?」
柚姫が光瑠に問い掛けると、光瑠はコクリと頷く。それを見た柚姫は、クスと僅かに笑う。その様子から黒子達もホッとしたのか、胸を撫で下ろす。
「2人とも本当に、無事で何よりっスよ!」
黄瀬は、満面の笑みを浮かべながら柚姫や光瑠を見ていた。勿論の事、2人は、当たり前だ…という顔をしている。
「洸汰、私は一度戻ります。この状況を優花に伝えます。」
ずっと様子を見ていた賢次は、洸汰に伝える。しかし、洸汰は目を見開いていたが、すぐに苦しげな表情へと変える。
「……その…記憶がないことを伝えるのか…?」
そう賢次は、優花に光瑠や柚姫の記憶がないことを伝えるのは余りにも酷だ。ましてや、優花にとって光瑠は大切な存在だ。
だけど、今の光瑠は優花の事を知らないだろう。洸汰の言った言葉に、首を縦に振る賢次。賢次は真剣な瞳をしていた。
「嘘を付くのは良くないのです。いずれかバレてしまいます。ならば、最初から真実を伝えるべきです。」