第4章 記憶と鎖
柚姫の微笑みは、とても弱々しく何よりも柚姫の瞳は悲しみが宿っていた。それを見た黒子は、すみません…と一言謝る。
黒子が謝ってきた事に、目を見開く柚姫。だが、すぐに微笑みを浮かばせて首を左右に振る。
「大丈夫。気にしてないよ。記憶はいつか戻るから…。」
「もし、戻ってこなかったらどうすんだよ?」
青峰の言葉に、その場が少しだけ冷たく重くのし掛かる。それを聞いた桃井は、何言ってるの!?と青峰に怒るのだ。
「だってよー、ホントの事じゃねぇか…。」
「それこそ、その時だ。前の自分が死んだ事にすればいい。今の自分で、生きるしかない。別に、どういう事でもない。」
光瑠は、真っ直ぐな瞳で前を向いて青峰に語る。それを同意するように首を縦に振る柚姫。この2人の心は、けして折れてもいない。ひたすら、生きるという気持ちを宿していた。
「では、その生きる希望を見失わないように、私達が光瑠様達を支えましょう。」
賢次は、微笑みながら光瑠に言うと、光瑠は僅かに目を見開いていたが、やがてふっ…と笑いあぁ…と短く答える。
こうしている間に、目的の場所であるリビングに到着。やはり、此処も綺麗に再生されている。壊れた部分など、一切見つからない。それぞれ、席に座り賢次が今までの出来事を話すのだった。
記憶になくとも、その話を信じるかのように真剣に話を聞く柚姫と光瑠。
「話はだいたい分かった。お前らに、辛い役目をさせたな…。悪かったな。」
光瑠は、僅かに顔を歪ませながら賢次と洸汰に謝る。