第4章 記憶と鎖
柚姫は、満面の笑みを浮かばせながら光瑠に向かってお兄ちゃんっと呼ぶ。そうしたら、光瑠は今までとは違う微笑みを見せる。
「それと、兄に向かって敬語は、不要。普通に喋ってくれ。」
「え…?う、うん!分かったよ、お兄ちゃん!」
敬語という言葉に、戸惑いを見せたがすぐに表情を変える柚姫。そして、柚姫は立ち上がる。暫く寝ていたせいか、少しよろける。
「姫様、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫…。まだ、うまく足に力が入らないだけだから…。それにしても……。」
柚姫は、体を支えてくれた洸汰を凝視する。その瞳には、誰?と語りたくなるほどだ。それに気付いた洸汰は、すぐに微笑み静かに答える。
「失礼しました。俺は、若田洸汰です。姫様の部下です。そして、彼らは姫様の友人です。」
洸汰は、柚姫に軽く説明をする。ついでなのか軽く黒子達の事も説明するのだった。そして、優花が言った。
「詳しい説明は、リビングに行ってからにしましょう。」
そういうわけで、賢次の指示により、リビングに移動することになった。その移動の途中で、黒子が柚姫に話し掛ける。
「あの、柚姫さん…。」
「ん…?えっと………黒子って言ってたっけ?どうしたの?」
柚姫は、黒子の方向を見て一瞬だけ戸惑いを見せたがすぐに微笑んで聞く。
「いきなり言っては、気の毒に思いますが…。どこまで記憶がないのですか…?」
「…自分の名前すら覚えてない。何よりも私は何処で産まれて、何処で何をしていたのかも分からない。それに、自分の親の顔すら覚えてない…。」