第4章 記憶と鎖
その言葉は、やはり桃井にとってもショックの為、瞳からポロポロと涙が零れ落ちる。桃井の頬に流れる涙を丁寧に拭き取っていく柚姫。
柚姫は、今にでも消えそうで弱々しい声で桃井に言う。
「…泣かないで。大丈夫だから。」
「っ、うん……。」
桃井は、柚姫の手をギュッと握り締め泣きながらでもしっかりと頷く。柚…と後悔しているように呟いている洸汰。洸汰の右手はギリギリと拳を作っていた。
「俺は………………何のために生きてきたんだ……?大切な人を守れてない……。」
洸汰の瞳には、絶望を写していた。守れないという言葉だけに、心を痛めていた。それを慰めるように柚姫は、洸汰を優しい瞳で見る。
「そんなに責めないで。貴方の心が死んでしまう。」
「姫様…。俺………は………。俺は…!」
すると、ポン…と洸汰の右肩に手を置く賢次。
「気をしっかりして下さい。記憶がないだけです。いずれか元に戻ります。それまで私達が支えなければなりません。落ち込んでいる場合ではありませんよ。」
「…………あぁ……。」
賢次の言葉に、やがて洸汰は頷く。安心したのか柚姫は、僅かに頬を緩ませてやがてゆっくりと身体を起き上がらせる。
その時、動いた為ジャラ…と鎖が鳴る。やはり、鎖の量は光瑠よりも多い。
「姫様、あまり動かれては…。」
「大丈夫……。重さはあまり感じられないから…。」
そうこの鎖は、何かの術による物で重さはないという。