第6章 恋の策謀事件(上)
授業が終わり放課後になった。この日もキューピットとアフロディティーは屋上にいた。
「デートって言っても学校の中じゃ行く所も限られてるわよね。」
アフロディティーがため息をついた。
「だからこそ2人だけの秘密の場所を見つけようよ。」
「あなたは空が飛べるからいいんでしょうけど私には無理だわ。」
アフロディティーはキューピットを羨ましく思っていた。
「そんなことないって。空を飛ぶのも怖いもんだよ?」
キューピットはニッコリして彼女を抱き寄せた。
「そうなのかしらね?」
2人は嬉しそうに笑い合っている。
その時ちょうどヘファイストスが屋上にやってきた。
「とんでもないものを見ちまったな。」
「何だ、ヘファイストスじゃないか。とんでもないものってなんだよ?」
そこにキューピットが彼に駆け寄った。
「俺は邪魔者みたいだから帰るわ。そんじゃあな。」
ヘファイストスは呆れたように階段を下りていった。
「ちょっと。」
キューピットは彼を追いかけようとしたがアフロディテがそれを止めたのでやめることにした。
「それくらいにしたら。もういいでしょう?」
「うん。」
「早く続きは?」
アフロディティーがキューピットに続きを促したが、キューピットはヘファイストスの言った”邪魔者”という言葉が心のどこかに引っかかっていた。
その時突然雨が降り始め2人は屋上を出て階段を下りて学校の中に入っていった。
「なんで、こんな時にに雨なんか降るのよ。」
アフロディティーは文句を言っていたけれどキューピットはこれでよかったんだとほっとした。ヘファイストスの言葉が気に掛かり続きどころじゃなかったからだ。
「仕方ないよ。続きはまた今度な。」
キューピットは彼女にそう言い聞かせて急いで階段を降りて行った。
「待ってよ。」
彼女の声が階段から遠くに響いていた。
雨が降ると学校の中は潤いが増したようにキラキラしていた。