第6章 恋の策謀事件(上)
図画の授業が終盤に近づいた頃ヘファイストスはアフロディティーの様子を見ていた。彼女は課外授業をいいことにキューピッドにぴったりと離れなかった。
「授業中はよせよ。」
ヘファイストスが小声で2人に言うと思わぬ言葉が返ってきた。
「芸術は共有して感じるものでしょう?」
アフロディティーがくすっと笑ったのでヘファイストスは返す言葉がなく黙っているしかなかった。
ヘファイストスはこの野外授業で感じるものがあった。彼は生まれた時に両足の曲がった醜い奇形児であった。これに怒った彼の母親ヘーラーは、生まれたばかりのわが子を天から海に投げ落とした。その後、ヘーパイストスは海の女神テティスとエウリュノメーに拾われ、9年の間育てられた後、天に帰ったという。あるいはヘーラクレースが乗る船を嵐で目的地よりかなり離れたコス島に漂流させて彼を妨害した為、ゼウスから罰せられそうになったヘーラーをかばおうとしたためにゼウスに地上へ投げ落され、1日かかってレームノス島に落ち、シンティエス人に助けられたといわれており、この時に足が不自由になったとされる。なので今でも彼の足は少し曲がっている。
「いつか海の女神テティスとエウリュノメーに育ててくれた感謝を言わなくっちゃね。そのためには彼女たちを探さなきゃいけないな。」
テティスとエウリュノメーは今頃どうしているんどうしているのだろうか?
この間の図画授業で”シンティエス人”について教わった。シンティエス人と聞いたときどこかで聞いたことがあったが思い出せずにいた。彼らは一体何者なのか?調べるのはまたの機会にしようとヘファイストスは考え込んでいた。