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時と光と風の中で

第6章 恋の策謀事件(上)


翌日の図画の授業ではムシーケ先生が生徒達に壁画を見せてに外へ連れて行ってくれた。
「これは二秘儀の壁画工ウ紀元前ー世紀ボンペイ秘鱧荘リ少の秘腕の壁画なのです。トリクリニウムをぐるりと囲む連続したひとつの物語として描かれているわ。現在は儀式の一連の流れを描いたものとする説カ晴力です。」
先生が丁寧に説明してくれた。するとそこにウンディーネがすかさず質問してきた。
「ムシーケ先生、描かれている女性は誰なのですか?」
「そうですね、彼女は『秘儀荘の美人』と呼ばれていた方なのです。でも、ごめんなさいね。詳しいことはわかっていないの。」
先生がため息をついたのを見てディオが首をかしげた。
その絵には頭巾をかぶった横顔の女性とその下に裸の子供が何かの紙を手にしています。そして子供の右上に『秘儀荘の美人』と呼ばれている女の人がいた。ディオはこの壁画を見て感じることが沢山あった。2人の女性が互を見合っているようにも見えたし2人から冷たい空気が感じられた。先生曰く”深遠表情が見る者を捉える女性”だとのことだった。
「僕のお母さん?」
ディオがそう呟いているとケンタウロスがディオに話しかけてきた。
「あの壁画の女性がディオのお母さん?」
「多分そうだと思う。でも僕にはお母さんとの良い思い出はあまりなかったからな。」
ディオがため息をついた。
「でも、僕は羨ましいけどな。」
「え?」
「だって僕のお母さんは誰かわからないから。いつか探して会ってみたいんだ。たとえ悲しい知らせが来てもちゃんと受け止める覚悟を決めないといけないからね。」
ケンタウロスはこの時のディオが少し輝いているように感じた。
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