第6章 恋の策謀事件(上)
あれから学校の授業も終わり夕食の時となった。この日のメニューは豚肉の焼き串、小さな黒い大麦パン、土地の野菜(lachainon)のサラダ、オリーヴの実のペースト、スパルタの黒スープ、ぶどうジュースだった。スパルタの黒スープとは、香料をふんだんに効かせた一種のポーク・シチューであったと考えられる。いずれにしても、料理は香料が強烈にきいていて、古代ギリシア人はさぞかしくさい息を吐いていたことであろう。
みんなでテーブルを囲んで食べているとヘルメスの姿がなかったのである。
「最近ヘルメスって見かけないな。何してるんだろう?」
ケンタウロスが首をかしげた。
「さあね。」
このところマルスもヘファイストスも見かけない。でもみんなは特にそれ以降は気に求めなかったのだ。
食事が終わると生徒達は食事を片付けて寮へ帰って行った。みんなが帰ったあとにヘルメスとへファイトスの姿があった。
「あれ、ヘルメスじゃないか?寮へ帰らないのか?」
ヘファイストスがヘルメスに聞くとヘルメスは”面白い話があるんだけど聞きたくはないか?”と誘ってきた。
「面白い話??」
ヘファイストスが不思議がっているとヘルメスはそのまま話を続けた。
「言うのは他でもない、なぜキューピッドは母親と付き合っているのか?ということさ。」
「母親だって?あのアフロディティーが?冗談はよしてもらいたいな。」
ヘファイストスはヘルメスの言葉に嘲笑ったが余りにもヘルメスが真剣な顔をするのでごくりと唾を飲み込んで彼の話に耳を傾けた。