第1章 出発~新たな出会い~
授業が始まると教室中が静けさに包まれた。
「生徒の諸君、ごきげんよう。」
授業のチャイムが鳴ると先生がドアを開けてガラーッと教室に入って来た。
そして生徒達は先生の指示で教科書を開き黒板に書かれた字をノートに写し出した。
「初めのページを見てくれ。ここではまず、二圃式の乾燥農業について学んでいく。それは以下の通りである。」
そして先生はこう続けた。
「穀物類は大麦・小麦が主であり、特に前者の生産が圧倒的である。」
先生が黙々と説明をしているとサタンがしゃしゃり出るように手を挙げた。
「先生、質問があります。」
「なんだね?」
「どうして他の寮の生徒と一緒に勉強するんですか?」
サタンはケンタウロス達の方をじろりと見て言った。
「寮は違えど学年は同じだからな。この学校ではクラス別の授業はないのさ。」
そんなことは当然という顔をして先生は言った。
「君は入学の手続き書を読まなかったのかね?昨日入学式の後にみんなに渡ってるはずだぞ。よく読んどけ!」
先生の注意に生徒達がどっと笑った。
「はい、静かに。授業中だぞ。」
先生が生徒達に注意を促す。
サタンは恥ずかしさと怒りでいっぱいになりどさっと席に着いた。
「サタンの野郎、バカじゃねーの?」
誰かが小声で生徒に話しかけていると先生がやって来て教科書を丸めて生徒の頭を軽く叩いた。
「減点対象になりたいか?静かにしろ。」
「はい・・・すみません。」
怒られていたのは鍛冶屋の息子のヘファイストスと彼の話を聞いていた伝令使のヘルメスだった。
「なんで俺まで怒られなきゃいけないんだよ。」
とヘルメスが文句を言っていると先生が”成績に響くぞ”と2人を叱った。
「すみません。」
怒られた2人はそれからはおとなしくなった。
1時間目の授業が終わった後、サタンがケンタウロス立ちの方にやって来て嫌味たっぷりにこう言った。
「お前達のせいで恥をかいた。どうしてくれるんだ?」
「いや、自分が手続き書をちゃんと読まなかったからだろう?人に罪をなすりつけるなよ。」
ケンタウロスが反論した。
「ふん、行こうぜ。」
サタン達は気だるそうに教室を後にした。
「なんて感じ悪い奴らだ。」
ディオが去っていく彼らの背中にそう叫んだのも虚しく教室中に声が響き渡っただけだった。