第12章 エルフ~ポッシビリタースの秘めた力~
みんなが木に駆け寄りぶどうに手を伸ばしているとディオがこう言った。
「これはスチューベンっていう品種なんだよ。」
「さすが、ディオはぶどうの品種を見分けるのが得意ですもんね。」
ウンディーネが感心してウィンクした。
「でも木が高すぎてぶどうが取れないな。」
ケンタウロスが残念そうに言うとテューポーンがみんなのぶどうをもぎ取ってくれた。
「おいしいー。」
みんなは摘みたてのぶどうにかぶりついた。昨日から何も食べていないみんなはお腹をすかせていた為あっという間に食べてしまった。
「それにしてもエキドナを殺した犯人って一体?」
ウンディーネは考え込んでいた。偶然にもエキドナの死を知ってしまった以上避けるわけにはいかないのである。
「何か裏でもあるのかしら?」
ウンディーネは道の先をじっと見つめて呟いた。
「ウンディーネ、どうかしたの?」
そこにケンタウロスが心配そうに話しかけてきた。
「なんでもないわ。それよりテューポーンさん、昨日の話だと”娘のヒュドラーをヘーラーに取られたのがよっぽどショックだったんだろうね。”と言っていましたが何故あなたとエキドナの娘さんを奪われなければならなかったのですか?」
ウンディーネは気になっていたことをテューポーンに聞いた。するとテューポーンはため息をついて歩きながら話してくれた。それに続きみんなはチャリオットに乗って移動しながら話を聞いた。
「話は長くなるけどね。ヒュドラーは女の子だったんだ。エキドナと僕は女の子を授かることを夢に見ていたからあの時は大変喜んでいたよ。僕とエキドナの間にはその他にも女の子はいたけど彼女は娘に愛を全力で捧げていたのさ。」
「なるほど。それで女の子は何人授かったのですか?」
ケンタウロスが不思議そうに聞いた。
「ヒュドラー、クリュンヌ、デルピュネーそれからパイア、キマイラ、スキュラの6人だよ。男の子も合わせると12人になるね。」
「凄い子沢山なのですね。でもその中で何故ヒュドラーだけが奪われたのですか?」
ウンディーネはテューポーンを見上げて聞いた。
「詳しい事は知らないな。でも噂によるとヘーラクレースと戦わせる為だと言われているのさ。何故戦わせるために奪ったのかは知らないんだよね。」
テューポーンは肩をすくめた。
「そうなのですね。」
朝の光に包まれながらケンタウロス達はエキドナの死を追っていった。