第12章 エルフ~ポッシビリタースの秘めた力~
「良かった。」
兎に角助かって良かったと安堵しているとその人は周りを見回していた。
「あの、僕は助かったんですか?」
「ええ、そうよ。それにしてもあなたは何故洞窟の中にいたのですか?」
ウンディーネはその人に聞いた。
「もしかして、僕らと同じ雨宿りでこちらに?」
ケンタウロスも続けてその人に聞いた。
ケンタウロス達が助けたのは若い体の大きい男性で薄い羽衣を身にまとっていた。
「ああ、これは失礼。僕の名前はテューポーン。どうしてここにいるかって?天空を破壊してたら何故かここに来てしまってね。」
男性は笑顔で答えた。
「テューポーンですって?それじゃあ、あなたがエキドナの夫なの?」
ウンディーネは彼の名前を聞きひどく驚いた。
「そうですよ。」
彼はテューポーンという名前らしくエキドナの夫だと言った。
「ええ?でもエトナ火山に封印されたはずじゃあ?」
「エトナ火山?何だそれ?」
ウンディーネは驚いていたが彼がエキドナの夫だとしたらまだ火山に封印される前なのかもしれないとみんなに告げた。
「それで、僕の妻はどこなんです?」
テューポーンはケンタウロス達にエキドナの居場所を尋ねた。
「知らないんですね・・・本当に?」
みんなはエキドナが亡くなっていることを彼に告げるか迷っていた。ここで真実を話し彼にショックを与えるのか、それとも嘘をついてごまかしてなかったことにするのか非常に辛かった。でもケイローン様のことで何か聞けるかもしれないと思い、テューポーンに真実を話すことにしたのだ。
「そりゃ、そうですよ。ここ一週間は妻の姿を見てないですからね。娘のヒュドラーをヘーラーに取られたのがよっぽどショックだったんだろうね。それから姿をくらましたっきり一度も見てないんです。妻の行き先知ってますか?」
「あの、エキドナは私の学校で倒れていました。」
ギュム先生が申し訳なさそうにテューポーンに言った。
「倒れたって!?嘘だろう?」
テューポーンは驚きの声を上げギュム先生の肩を掴み揺さぶった。
「ごめんなさいね。手遅れなんです。私達が駆けつけた時には息はしていませんでした。」
「えっ・・・そんな。」
ケンタウロス達はテューポーンが落胆したのをこの目ではっきりと見た。