第12章 エルフ~ポッシビリタースの秘めた力~
こうして女性はテキパキと治療していった。
「これは何かに噛まれた跡に違いないわね。」
女性は治療しながらそう言っていた。
「噛まれた跡?」
ケンタウロスは首を傾げベッドに横たわるケイローン様を見つめた。体には何者かに噛まれたような跡があり、それを覆い隠すように無数の包帯が巻かれていた。
「これは一体?」
ケンタウロスはウンディーネ、ディオと顔を見合わせた。
「そう言えば僕らがギュナスティーケ先生と話していた時何処かで音がしなかった?」
ケンタウロスはみんなに聞いた。
「ああ、ドーン!とか凄い音だったよな。」
ディオが頷く。
「何があったのか調べた方が良さそうね。」
ウンディーネの言葉にみんなは医務室を後にした。
「後はお願いします!」
「わかったわ。私は治療に専念するわね。」
医務室のおばさんいや、ここではお姉さんの言葉を背にケンタウロス達は医務室を後にして走り去った。
先程の長い廊下を抜けると異様な匂いが立ち込めてみんなは思わず鼻を手で覆った。
「こっこれは!?」
ケンタウロス、ディオ、ギュム先生が驚いているとウンディーネがそれを見つめて言った。
「これはエキドナの死体だわ。」
「えっ?エキドナって何だ?」
ケンタウロスが驚いてウンディーネに聞いた。
「ええ、エキドナとは見ての通り上半身は美女で下半身は蛇で背中に翼が生えた姿をしている怪物よ。またの名を”蝮の女”とも言うわ。ヘーシオドスの『神統記』ではクリューサーオールとオーケアニデスのカリロエーの娘とされてるけど、出自については様々な異説があるのよ。また、テューポーンの妻でケルベロスやヒュドラーなど多くの怪物達の母でもあるわ。テュポーンがエトナ火山に封印された後、息子のオルトロスと再婚し、ネメアーの獅子やパイア(クロミュオーンの猪)、スピンクスを産んだとされてるけど・・・どうして彼女がここにいるの?そして死んでいるの?」
ウンディーネは悲しそうに説明してくれた。
「わからないわ。でもあの時凄まじい音がしたのはこれが原因だったみたいね。」
ギュム先生が死体を見つめてぽつりと言った。
「でもケイローン様とどんな関係があったのかな?彼女に噛まれたのだとしたら彼女は誰に殺されたのだろう?」
みんなはますます不思議に思うばかりであった。