第12章 エルフ~ポッシビリタースの秘めた力~
「ドワーフは?」
「これも調べましょう。」
「ドワーフは、人間よりも少し背丈の小さいそうよ。随分と年を取られた方なのね。でも彼ではなさそうね。」
「ということはやっぱりエルフかしらね?」
そこでエルフについて詳しく調べることにした。
「エルフに使者がいたんだなぁ。えっとエルフに関する最も古い記述は北欧神話にある。最初期のエルフは、古ノルド語でアールヴと呼ばれた。同時期の記述は存在しないが、後の民間伝承に登場するアールヴと語源的に結びついた多くの単語の存在は、エルフへの信仰が古代スカンディナヴィア人だけのものではなく、ゲルマン民族全体で一般的であったことを強く示唆しているだってさ。」
ケンタウロスが本の記述を読み上げた。
「エルフは北欧神話に様々な形で登場する。現代の私達がエルフの概念を明確に定義づけることはできないが、人々はエルフを強力で美しい、人間ほどの大きさの存在として理解していたように思われる。彼らは一般的に先祖崇拝と同様に、豊かさと結びついた半ば神聖な集団として言及される。エルフの存在は自然の精霊や死者の魂に対するアニミズム的な信仰と類似していて、ほとんど全て人間の信仰と通じるものがある。ほぼ間違いなく、ゲルマン民族にとってのエルフとは、ギリシャ・ローマ神話におけるニンフや、スラヴ神話におけるヴィラやルサールカのような存在であったと思われる。」
続いてウンディーネが読み進めた。
「なぁ、このアニミズム的って何だ?」
ディオがウンディーネに聞いた。
「アニミズムとは、生物・無機物を問わないすべてのものの中に霊魂、もしくは霊が宿っているという考え方のことよ。」
「でもエルフって長寿なんだろう?魂が宿ってるっておかしくないか?」
ディオが不思議そうに答える。
「それもそうね。あら?あの子は?」
ウンディーネが本から顔をあげたので2人もどうしたのかと遠くを見た。するとそこには食事会で見た少年がじっとこちらを見つめ立っていたからだ。
「あなたはもしかしてエルフなの?」
ウンディーネが彼に問いかけると彼はこくりと頷いた。
「どうしてここにいるんだい?」
続けてケンタウロスが彼に聞いたがそれからは何も話してくれなかった。
「・・・。」
「あっ、待ってよ!」
暫くして少年は図書室を走り去った。
ケンタウロス達が追いかけようと図書室を出た時には彼の姿はもうなかった。