第2章 真実とは何か?
医務室を出て留学生や他のみんなと別れてケンタウロス、ウンディーネ、ディオは3人で寮へ戻ることにした。
「あの張り紙事件って何も進展がないわね。」
ウンディーネは歩きながらケンタウロスに言った。
「本当に静かだな。でもおかげで悪ガキ達がいなくて清々するよ。」
そう言ってケンタウロスが肩をすくめていると、どこからか声が聞こえた。
「え?何だって?」
3人は目を丸くして声の方を探した。
「困りましたね。術士アブラメリンの聖なる魔術の書が何者かに盗まれました。」
誰かがため息をついている声が聞こえてきた。
3人はその声がする方へと耳を傾けてじっと聞いていた。
「術士アブラメリンの聖なる魔術の書って何だ?」
ディオが小声でウンディーネに聞いた。
「私にもわからないわ。」
ウンディーネは首を横に振り、声のする方へ近づいた。
「校長先生?」
ウンディーネが見たのは校長先生とゾロアスター教を教えているエミール先生他数名の先生が話している所だ。
「あれがないと困りますな。今回の張り紙事件で生徒達もひどく動揺していたことでしょう。しかし事件はこれだけでは過ぎなかったのです。生徒達にはまだ話していませんが次の犯行予告かのようにお知らせが数枚と届いているのですから。」
エミール先生が先生達に紙を見せて言った。
「生徒達に新たな紙が届いたと教えれば大混乱を招いてしまう。それを恐れたかったのですか?」
そう聞く先生も何人かいたが大半は教えると厄介だからと頷いた。
「あの書が必要なのは願いが叶えられるからなのです。私達はこれ以上新しい学校を増やして欲しくないと思っています。なのであの書があれば阻止できたのに。本当にどこへ消えたのでしょうね?」
ウンディーネ達はごくりと唾を飲み込んで一部始終を聞いた後頷いた。
「僕らであの書を探すんだ。」
ケンタウロスが小声で2人に合図した。
「でもどうやって探すんだ?」
ディオが不思議そうに首をかしげた。
「私達はそういう宿命なのよ。聞いてしまった以上何がなんでも探し出す方法を見つけるのよ。」
3人はその場を離れて走り去った。
どこへ行くあてもなく走っていると、いつの間にか知らない所へ来てしまった。そこは厚い壁で覆われており一筋の光が差し込んでいた。
3人は手をつなぎ光の方へとゆっくり歩き出した。