第7章 恋の策謀事件(下)
ケンタウロス達は事務局の方に嘘をつき外へ出る手続きを済ませると一目散に森を目指して走って行った。2人の友人のために立ち上がったのはケンタウロス、ディオ、キューピッド、ウンディーネ、ガイア、ユニの5人と1匹だった。(ここではケンタウロスは人として扱います)
森を駆ける勢いは凄まじくどこまでも伸びる1本道が続く。そしてしばらく走るとみんな息を切らして歩き出した。
「まずは私とディオが2人を発見した場所に行きましょう。」
ウンディーネの言葉にみんな頷き歩いて行った。
「僕達が見たのはたぶんこっちかな?」
ディオがみんなに方角を指差した。
ケンタウロス達がウンディーネとディオが見たという現場に行くとそこは跡形も無くなっていた。
「おかしいわね。この辺りで見たはずなんだけど。」
ウンディーネが首をかしげた。
「もう少し奥へ行ってみよう。」
僕らのことはゴブリンに任せてあるから大丈夫と言い聞かせてみんなは森の奥へ入って行った。
これからたくさんの試練が待っているとも知らずにみんなは走って行った。
森の中は薄暗く学校の玄関に出たときはお天気だったのが嘘のようだった。森の中では薄気味悪い笑い声が微かに聞こえ、風が通り抜けるたびにくさのガサガサという音だけが森の中に響く。みんなは後ろも注意しながら森の中を駆けて行く。
こうして森の中に足を踏み入れたみんなはある光景を目の当たりにした。
「あれは何?」
ガイアが立ち止まってその光景を指さしたのだ。
ガイアが立ち止まったのでみんなも立ち止まってその光景を見た。
「あれはヘカトンケイルよ。」
ウンディーネが小声でそう言った。
「ヘカトンケイル?」
みんなはウンディーネの言葉に耳を疑った。
「ヘカトンケイルはギリシア神話に登場する3人の巨人なのよ。複数形は ヘカトンケイレスっていうの。古い呼び方だとἙκατόγχειρεςね。その名は百の手を意味し、五十頭百手の巨人の姿をしているとされる。ラテン語では訳され、Centimani とも言うわ。ギリシア神話の中でもトップクラスの怪力を持つのよ。」
みんなが目の当たりにしたのは巨人の姿をしたヘカトンケイルだった。