第6章 恋の策謀事件(上)
こうしてアフロディティーはマールスと恋人になりいい関係を築いてきた。休日はそれぞれの寮の談話室で話し合ったり学校の中でのデートを楽しんでいた。そしてキューピッドの時には成し遂げなかったキスもした。
マールスがアフロディティーの虜になっているように彼女もまたマールスの虜になっていた。もう2人は離れられない存在となったのだ。
もうすぐ12月になる11月半ばの時だった。アフロディティーのサンダルの件が未解決のまま時は過ぎて行く。
「なぁ、今年の冬休みには何が欲しい?」
マールスが彼女に嬉しそうに聞いた。
「そうねえ・・・あなたがくれるものならなんでも嬉しいわ。」
アフロディティーがにっこり答えた。
「おいおい、それは困っちゃうな。三美神の審判で、最高の美神として選ばれている君。」
「私のこと知ってくれていたのね?」
彼女は驚いて口をぽかんと開けた。
「そりゃそうさ。君のことはお見通しさ。」
マールスは得意げにそう言うと彼女と中庭のベンチに座りました。
「マールスはなんでも知ってるから叶わないわね。ねえ、最高の女神の私が彼女で嬉しい?」
「うん。嬉しよ。」
マールスは彼女を抱きしめて答えた。
木枯らしが吹く中でも2人の仲は暖かな空気に包まれていた。そんな彼らを見ているとロマンチックとはこういうものなのかと改めて考えさせられますね。
しかし彼らがこうしている間にも決戦は既に始まっている。勿論アフロディティーだってサンダルの件を忘れたわけじゃないのだが犯人が今だにわからず学校の先生方も対処に追われ苦労している。ケンタウロス達だって協力して犯人探しにあたってくれてはいるがこれといって手がかりがないままだ。
ああ、この時が止まってしまえばいいのに。2人はそう思いながら時を過ごした。もうすぐ冬休みが近づくということにワクワクしていたのだ。しかし幸せとはなんとも不愉快なのでしょうか。そう思う時がやがてやってくるのである。