第2章 真実とは何か?
「ねぇ、ソフィストの一人プロタゴラスの事だけど。」
歩きながらふいにウンディーネが話を切り出した。
「トゥリオイを作ったんですってね。」
「あ~アテネの植民地のことだろう?」
ケンタウロスが思い出して続けた。
「彼の史書に書いてあったもの。ディオゲネス・ラエルティオスは『哲学者列伝』の中でプロタゴラスを原子論者デモクリトスに学んだってね。」
ウンディーネが図書館で借りてきたのと、2人に本を見せた。
「ディオゲネス・ラエルティオス?誰だそれ?」
ディオがウンディーネに聞いた。
「あら、知らないの?彼は哲学史家でギリシア哲学者列伝の著者として知らているわよ。」
「その本を読んだことあるのかい?」
ディオがさらに聞いた。
「ええ、少しね。でもあまりにも難しくて途中で諦めてしまったけれどね。」
ウンディーネはため息をついた。
「凄いな~。そんな難しい本によく手がつけられるね。」
ケンタウロスは感心して目を輝かせた。
「えっと、デモクリトスはソクラテスより前に生まれたんだよな。」
ディオの言葉にウンディーネが頷いた。
「彼はソフィストじゃないよね?」
「さあ、どうかしら?この本にはそこまで詳しくは書かれていなかったもの。」
そんな話を歩きながらしていると廊下の向こうから足音が聞こえてきた。
「な・・・何?」
3人は角に隠れて足音のする方を少し覗き見た。
「誰か来るぞ!」
ディオが小声で言ったその時足音はさらに大きくなった。
「さぁ、こちらへどうぞ。」
そこには幾何学のタレス先生と見知らぬ男性が並んで歩いていた。そして3人は先生が見知らぬ男をある部屋に案内している所を見てしまったのである。
「誰なの一体?」
ウンディーネが眉をひそめる。
先生に部屋に入るように促された男性は”すまない”と一言だけ言って中に入っていった。
バタン
「学校に来客なんて珍しいわよ。」
と言うウンディーネにケンタウロスが首をかしげた。
「新任の教師とかじゃない?例えば女性教師が産休に入ったんでその代わりとか。」
「そうなのかな~?僕はあの人どこかで見たことある気がするな。」
ディオは腕を組みその男を思い出そうとしたが結局思い出せなかった。
しかしあの男の正体は何なのか?3人のもしかしたら・・・という嫌な予感が頭をよぎっていた。