第6章 恋の策謀事件(上)
この日アフロディティーは夕食を済ませて寮に戻るとクローゼットを開けて片方しかない金のサンダルを手にして見つめていた。
「はぁ、戻ってくるはずなんてないのにね。」
そこにウンディーネとガイアも寮に戻ってきた。
「アフロディティーが落ち込んでいるなんて相当思い入れのあるサンダルなのね。」
ウンディーネが部屋の明かりをつけて言った。
「ん?これは?」
その時アフロディティーが手にしていたサンダルの中から見覚えのない紙切れが落ちてきた。
「何なの?」
ウンディーネとガイアもアフロディティーに駆け寄って紙切れを見つめた。
「この間見たのとだいぶ違うようだけれど・・・え?」
ガイアが紙切れを見て身震いしました。
「決戦は既に始まっているですって?」
ウンディーネが首をかしげた。
「まさか、これは?」
「ガイア、何かわかったの?」
アフロディティーがおずおずとガイアに聞いた。
「私の推測によればミュンヘン降霊術手引書じゃないかしら?」
ガイアは驚きのあまりに腰を抜かしてしまった。
「グリモワール、手稿 CLM 849 の仮称である。ラテン語で記されたこのテキストは、主として鬼神学と降霊術に関するものであると言われているあのミュンヘン降霊術手引書のこと?」
ウンディーネが目を見張った。
「そう言えばガイアって未来が予言できるのよね?」
アフロディティーの言葉にガイアが頷いた。
「なら、私のサンダルを盗んだ人が誰なのかわかるかしら?」
「ごめんなさいね。そこまでは強いまじないで遮られいるからわからないわ。」
これは一体どういうことなのだろうか?彼女達がいない間何者かが寮へ侵入して紙切れを置いていったに違いありません。しかしその者が誰なのか見当がつかず3人は困り果てていた。