第6章 恋の策謀事件(上)
この日の1時間目はペルーサー先生の読み書きだった。そして2時間目はソクラテス先生の哲学そして3時間目は商業経済と続いた。マールスは授業中緊張していることを必死に隠さなければならず授業に身が入らなかったのだ。こうしてあっという間に時間は過ぎて放課後になった。マールスはドキドキしながら彼女にちゃんと言おうと決意した。”僕らはただの友達じゃないか。だからこれ以上の関係は持てない”と。そして彼女が来るのを待った。
「お待たせ!」
マールスは咳払いをして覚悟を決めた。
「ちょっといいかな?」
「何なの?」
「僕たちって友達でいいんだよな?」
「いえ、もう私達は・・・。」
マールスの言葉を遮るように彼女は歩み寄った。
「僕らは友達だから。」
「私達は友達以上よ。」
2人の声が重なっ。
「え?なんだって?」
2人は耳を疑った。
「私はキューピッドではもう満足できないわ。私にはあなたが必要なの。」
アフロディティーはマールスの胸に飛び込もうとした。しかしマールスはそれを払い除けた。
「そんな・・・僕らは友達だからこれ以上の関係には踏み込めないよ。」
「どうしてそういう事を言うの?わかったわ。キューピッドと話をつけて別れてくるわ。それでいいでしょう?」
「いや・・・でも。」
マールスは彼女の急な告白に戸惑ってしまった。
「マールスは私のことが好きじゃないのね?」
彼女は泣き出してしまった。
「でも僕は君達の仲に巻き込まれたくないんだ。勿論サンダルを探すのには協力するけど。」
マールスは泣いている彼女を不憫に思ってしまい彼女を思わず抱きしめていた。
「本当はこんなことになっちゃいけなかったんだ。でも僕だって自分に正直でいたい。アフロディティー、君を愛しているよ。」
「本当なのね?」
彼女が泣きながら聞いてきたのでマールスは頷いた。そして1つの詩を読んだ。
~八百万の神々の母なる夜、愛しき夜よ
私は祈る、ただひとつだけ
夜宴の友なる夜の女神よ
ヘリオドーラの夜着をかけられ
肌身の温もりに眠り惑い慰む者あらば
ランプは眠れ
彼女の胸に身をば預けしその者は
安らえ、第二のエンデュミオン~
そして彼女も詩で返した。
~星を見つめているね、私のアステール
私が空になれるなら
数多の星の目で君を見つめようものを~