第6章 恋の策謀事件(上)
学校では”アフロディティーのサンダルを探している”と張り紙がそこらじゅうになされ先生達も精一杯の対策を取っていた。それから生徒一斉にアンケート用紙が配られて彼女の友人関係や周りの出来事を聞いて回った。先生達はいじめに遭っているのか知りたかったのです。
「張り紙がそこらじゅうにすごいな。」
マールスが驚いて目を見張った。
最近のアフロディティーは授業が終わった放課後にマールスと会って話すのが日課になっていた。
「そうね。なんだかここまでされちゃうと申し訳ないな。」
アフロディティーは照れながら言った。
「それじゃあ、行こうか。」
「うん。」
アフロディティーはマールスと歩きながら話をした。
「最近彼と上手くいってないんだって?」
マールスは彼女に聞きいた。
「そうなのよ。もう後には戻れないかも。」
彼女はにっこり笑ってくるりと回るとマールスの行く手を阻んだ。
「マールスは何もかも完璧で出来てる男の子よね。憧れるわ。」
「そんなことないって。」
マールスは微笑んだ。
「でも寮が違うから残念。会えるのは授業の時とご飯の時だけ。」
彼女はため息をついてまたマールスと歩き始めた。
「今こうして会ってるじゃないか。」
彼女はマールスにぴったりと密着して歩く。そんな彼女を見てマールスはドキッとしてしまった。
「あなたが本名を話してくれたように私にも名前が2つあるのよ。知りたい?」
マールスは彼女の美しさに見とれまいと必死でこらえていた。でも我慢ができずに聞いてしまった。
「教えてくれよ。2つの名前って何だい?」
「ふふふ、それは”アプロディーテー・ウーラニアー”と”アプロディーテー・パンデーモス”っていうのよ。まだキューピッドにも教えていないわ。これは2人だけの秘密ね。」
アフロディティーはウィンクして彼の肩に腕を回した。
「2人だけの秘密・・・。」
この時マールスはなんだか知ってはいけないことを知ってしまった気分でした。初めはただの友達だった2人がいつしかお互いに惹かれあっていった瞬間だった。