第11章 箱の中身はなんでしょな。
跡部「チッ、いつの間にか長引いちまったぜ……」
用があり場から離れていたが、意外にも時間を取られてしまいため息を吐きながら廊下を歩く。
跡部「そう言えば…名前はちゃんと部屋に戻ったのか…。様子でも見に行ってやるか」
露天風呂で寝てしまった名前を自分が部屋まで送り届けたかったが、用事のせいで行けず手を出しそうにない宍戸に頼んでいた。
だがやはり心配はしている為、一応名前の部屋を覗いてみることにした。
ーーー数分後
名前の部屋の前に着いた。
跡部「……入るぞ」
寝ているかもしれないので小さく控えめな声で断りを入れた後に扉を開けて中に入る。
跡部「なんだ、やっぱり寝てるか……」
部屋に入ってくれば案の定眠っていた名前。
自分が惚れただけはある……そう思えた。
スヤスヤと気持ちよさそうに眠っている名前の傍に俺は近寄り腰をおろした。
長いまつ毛に白い肌。
触れたい衝動に駆けられる。
そんな名前を眺めながら柔らかな髪を優しく撫でてやる。
早く自分のモノになればと、心に願った。
名前を眺めていると、ふと頬に残った涙の跡があった。
跡部「……!…泣いてた…のか?」
普段は弱い部分など見せない名前。
涙の跡なんて似合わないくらいに元気だ。
彼女の悲しみに気付いてやれなかった自分に苛立ちを覚える。
跡部「……名前…」
そう小さく呟きながら涙の跡を親指の腹で優しく撫でる。
このまま居座ったら起きてしまうかもしれないと思えば立ち上がり部屋を後にしようとした跡部。
だが好きな人の自室と言うものは気になる。
部屋の中を見渡し、机に目を向けると……
跡部「なんだこれは……」
ひとつの小さな箱を見つけた。
気になったので躊躇いもなく開け中を見た。
跡部「……!!」
中身を見て声を発しそうになってしまったが慌てて言葉を飲み込む跡部。
箱の中身はなんでしょな。