第10章 たまには甘えたくなるものです。
名前の両親は、名前が幼き頃に離婚をしている。
名前は母親に引き取られたが、母親も男を作って名前の前からいつの間にか離れていってしまった。
まだ13歳という若さ。
到底一人で生きていけるわけもなく、今はおばあちゃんと2人で暮らしている。
両親のこともあってか、自分の気持ちを閉ざすようになってしまった名前。
だが、周りにはいつも明るく振る舞い暗い顔なんて見せることもなかったのだ。
木手「……迷惑ですか……。それは貴女が決めることではありませんよ。頼られた本人が決めるだけのこと……それに、我々も他校の人間、もちろん氷帝だって貴女に頼られたからと言って迷惑がる奴はまず居ないでしょう。」
『永四郎ぉ……』
木手の言葉に涙がじんわりと溢れた。
心細かった気持ち、今日あったことが入り交じり涙に変わった。
木手「……泣いたら…いい顔が台無しですが……。まぁ泣きたい時は泣いたらいい…」
そう言いながら名前の顔に近寄り、目元に優しくキスをされる。
『ん…、永四郎、ありがと……』
木手「名前…頼りにくいならば、比嘉中の部員を頼りなさい。俺でも平古場くんでも甲斐くんでも。それで貴女が楽になるならいい」
『うん……なら、ちょっとずつ…頼ります……本当に比嘉中の皆も、永四郎先輩も大好き……』
比嘉に頼れ。
そう言われたことが頭に残る。
話している間も、木手は名前の髪を優しくなでていた。
その感覚に安心できたのか、名前はそのまま夢の中へと落ちていった。
木手「ようやく寝ましたか……本当に、放っておけないですよ……貴女は。ゆっくり休んでください」
名前が寝たあとも寝顔を見つめながら髪を撫でていた木手。
ぐっすり眠ったことを確認して、独り言を呟きながら名前の自室を後にしたのだった。