第10章 たまには甘えたくなるものです。
宍戸先輩はお風呂で寝てしまった私を気遣って部屋まで送ってくれている最中だ。
『なんかありがとうございます、宍戸先輩!』
宍戸「別に、構わねぇよ」
いつもながら素っ気なく返す宍戸。
でも内心は愛情に満ち溢れているが、恥ずかしくて表に出せないでいるだけである。
『でもお風呂入ってなかったよね?まだ』
宍戸「気にすんなって。後で入りなおせばいいだけだしなっ」
『宍戸先輩……やっさしー!』
何だかんだ優しい宍戸先輩が私は大好きだ。
宍戸だけではない。皆好きなんだ。
宍戸「や、優しくねぇよっ……!」
また顔を赤くする宍戸。
よほど照れ屋らしい。
宍戸と話しながら部屋まで続く廊下を歩いていれば、前方から見慣れた3人が見えた。
『あ!永四郎に凛ちゃんに裕次郎!』
宍戸「あ?」
俺と話していたと思ったら急に声をあげた名前。
何かと思い顔を上げた。
するとそこには比嘉中の3人が歩いてきた。
それにしても何で呼び捨てなんだ?
名前はそんなに比嘉と仲良かったのか?
何だか胸騒ぎがしたのは俺だけの秘密だ。
木手「おやおや、お風呂上がりですか?」
『うん!お風呂で寝ちゃって……』
そう言いながら苦笑いを浮かべる名前。
平古場「風呂で寝たぁ?やー、危なかっかしいなぁ」
甲斐「でも何で宍戸が一緒なんやー?」
宍戸「いや、俺は跡部に頼まれただけでだな…」
木手「頼まれただけ……ですか。頼まれただけの割には大切そうに手を握ってますねぇ」
宍戸「!こ、これは……ほら!あれだ!コイツ目離すとすぐ転ぶからっ…」
木手「ほう…。随分と愛されている様ですね… 名前は」
『え?そうなの?先輩?私のこと好きなんですか?』
宍戸「ばっ!変なこと言うな……!」
『変ですかね……?私』
宍戸「ったく……これだから……。こっからならお前の部屋近いし、一人で戻れるか?」
『?……あ、はい!全然大丈夫です!』
宍戸「そうか。なら気をつけるんだぞ?またな」
『ありがとうございました!ばいばーい!』
宍戸は比嘉を避けるように立ち去ってしまった。