第18章 まるで少女漫画みたいな【二口堅治】
◇
『その言葉、忘れないでよ』
『お前こそな』
『賭けてみる?』
『俺はお前が忘れてる方に賭けるな』
『ひどい』
『お前バカだから』
『バカって言った方がバカなんだよ、バカ!』
『バカバカうるさいな、バカ』
そんな会話が思い出されて、笑いながら泣きそうになる。
会話がバカすぎて、笑える。
覚えてるのが私だけな気がして、泣ける。
ほらね、私ちゃんと覚えてたよ。
あんな悲しくて少し嬉しい告白、忘れるわけないでしょ。堅治のバカ。
賭けは、
「………私の勝ち、だね」
覚えていて欲しくて、
でもそれを確かめるのが怖くて、
ただそれだけを言う。
ねぇ、そのハッとした目は"覚えてる"っていう答えなの?
「美咲、」
「堅治はバカバカ言ってたけど、私そんなにバカじゃなかったみたいね、残念!執念深さが取り柄って知ってた?」
いざ答えを聞くのが怖くて、急にまくし立てる。
「でも私知らなかった、こんなにも重い女だったんだって」
「なぁ、」
「恨むなら自分を恨んでよね?堅治のせいだよ、あんなこと言うから…」
「美咲!」
二口が私の名前を呼ぶのと同時だった。
「…誰から」
「……部長、から」
私の電話が鳴った。