第18章 まるで少女漫画みたいな【二口堅治】
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「…美咲が変わってなくて安心したわ」
ポロリと零した本音を平然とした顔のまま誤魔化して、俺はそう呟いた。
綺麗になっていた。
いや、高校の時から綺麗だったけれど。
確かにブスとは言っていたが、まぁ…あれは半ば挨拶のようなもの、と言えば怒るだろうか。牽制も一応兼ねていたのだが。
私服を見たことがなかったせいもあると思う。
化粧をして、制服じゃない格好をするだけでこんなにも雰囲気が変わるものなのか。
顔立ちは変わっていないのに、別人にも見える。
まぁ、会話をしてしまえば、あの頃となんら変わらないのだが。
「二口もあんまり変わってないね」
「そうか?」
「うん、その性格の悪さは当時そのままって感じ」
「まぁな」
「その悪びれないとこまで、そのまま…」
懐かしむような、でもどこか物悲しそうな目をする。
ねぇ、堅治。と美咲は言った。
その昔の呼び名に、自分の言葉が脳内に蘇る。
あの約束じみた身勝手な言葉が。
「…あのさ」
今もなお、あの時と同じ想いでいると言ったら。
「………私の勝ち、だね」
君は"重い"と言うだろうか。