第27章 No Way!!【牛島若利】
「…それならば聞こう。告白というのは、」
「ん?」
「どんな理由なら断っていいんだ?」
おお、そんな疑問が出ますか。そこからですか。流石です、流石としか言いようがありません。どういう育ち方をしたらこのような人間が出来上がるのか、逆に興味深いです。
「そうね…彼女がいるとか、他に好きな人がいる、とか」
いやー、でもあんたにそんな理由はできっこないもんねー、と笑い声と共に出かかった言葉は、十数秒のうちにひっくり返ることになる。
気付いたら、私は走っていた。なりふり構わず、そして日頃の運動不足も忘れて、全速力で走っていた。途中で足がもつれて、肺が痛くなって噎せ返った。心なしか高校に入ってから老化が激しい、まさかこんな場面でそれを恨むことになるとは…。
ぜぇはぁ、と荒い息をしながら、誰もいない中庭の隅っこによたよたと歩く。
「本当…なんなのあの男…」
土がつくのも構わずに、へにゃり、と座り込んだ。
「あんの朴念仁…バカでしょ…言い方とか、タイミングとか、シチュエーションとか…もう可笑しすぎ…」
もしかしたら私もバカなのかもしれない。あの牛島若利が相手なのだ。1mmでも、ロマンチックだとかそういうのを期待する方がきっと阿呆なのだ。
『なるほど。それなら、俺は美咲が好きなのだから十分断る理由になるな』
「牛島のバカ野郎ーーー!!!!!」
はらりと落ちたピンクのメモ用紙が、風に飛ばされて何処かへ行ってしまった。
ぐるぐるする頭と煩い心臓を抱えて、阿呆の私は一人で、
「あんな告白があるかボケ!!!!」と顔を押さえた。
「No Way!!」おわり