第18章 まるで少女漫画みたいな【二口堅治】
◇
「6年だよ、バーカ。…久しぶり、二口」
自分で言って驚いた。
気づいたら、6年もの月日が経っていた。
二口の姿を見て、そりゃそれだけの時間も経ってるよなぁ…と思う。
今着てるのはもちろん制服じゃなく、スーツだし、雰囲気も変わってる。
周りの迷惑がる眼線に耐え難くなってきて、2人で小道に入り込む。
「…それにしても1人で繁華街歩くとか寂しい奴だな」
開口一番にそれですか。
でもこういうのは慣れてるから、私は平然と言い返す。
「仮病使って飲み会抜けてきたの。1人なのはそっちもでしょ」
「俺は残業してた時に急に飲み会呼ばれたから1人なんだよ」
「え、じゃあ急いでる?」
「行くのやめたから別にいい」
「えぇ…行かなくていいの?」
「元々行くの面倒だったからいいんだよ」
これだけの会話で、少しホッとする。雰囲気は変わっても、本質は変わってない。
あの頃の私たちと同じだ。
「…綺麗になったな」
「……え?」
さらっと言われた思いもよらぬ言葉に私は目を見開いた。ドキッとした心は隠す。
「なんだよ」
「いや…高校のときはブスブス言われてたから」
「何、ブスって言ったほうがよかった?」
「うわ、すぐそういうこと言う!二口のバカ!」
「バカって言ったほうがバカなんじゃなかったっけ?」
「うぅ…」
言葉に詰まって悔しい反面、あの頃から変わってないことがすごく嬉しい。
この関係が、この会話が、この空気が忘れられなくて。
「…美咲が変わってなくて安心したわ」
あなた以外誰も好きになれなかっただなんて知ったら、あなたはどう思う?