第9章 ショートケーキ会談【月島蛍】
「そもそもさ」
私はフォークの矛先を目の前の男に向ける。マナー違反だが、まぁ気にしない。
「元はと言えばあんたの問題なんだから自分で考えなさいよ」
先ほど、話のきっかけは私にあると言ったが、事の発端はこの月島にあるのだ。
しかし、この事案に対する興味のなさがメガネのレンズ越しに明らかに分かる。
「そんなの言われても困ります。はっきり言って、ボクはそんなことどうでもいいんで」
「は!言ったね!自分に好意を寄せてくれている女の子がいるというのに、君はどうでもいいと!全く嫌味だね、このモテ男め」
む、と月島の眉間にシワが寄る。
感情論が苦手と言うわりに、すぐに顔に出るあたりは可愛いと言ってあげるべきか。
「…そういう呼び方やめてくれません?」
「あーあー、あんた顔だけはいいから、そのおかげでどれだけ私と山口が苦労していることか」
「…だけ、というところにはあえて突っ込みませんけど」
「だってそうでしょ?私と山口のところに来て『月島くんって彼女いるのか知ってますか?』とか聞いてくる純真無垢な女の子が沢山いるんだよ?あんたなんて絶対やめておいた方がいいのにさ」
あー可哀想な女の子たち、と私はオーバーリアクションで肩をすくめてみせる。
「先輩はなんて答えてるんですか」
「ん?『月島くんにはベタ惚れの彼女がいるからやめておいた方がいいよ』ってアドバイスしてあげてる」
「……」
「何かご不満でも?」
「…たくさんありすぎて呆れてるところです」
「あ、でも誰とは言ってないよ。プライバシーの問題があるしね」
私は二口目のショートケーキを頬張る。スポンジとスポンジの間に挟まったイチゴがきゅっと甘酸っぱい。