第9章 ショートケーキ会談【月島蛍】
「でもさ、付き合うって何?友達とは出来ないけど恋人となら出来ることって何よ」
「やっぱりそこの議論に辿り着くんですね」
「そりゃそうでしょ。あんたのモテ話なんかしてても楽しくないわ」
すると、フン、と月島が鼻で笑う。
私が不機嫌になるといつもこうだ。
人の不幸を鼻で笑うようなこの男の、甘いマスクに騙されている女の子たちが可哀想でならない。
「で、何かあったんですか?恋人でしかできないことは」
「…何か企んでいるな?」
「まさか、先輩のイタイ発言を心待ちにしてるなんてあるわけないじゃないですかぁ」
「今のその顔、写真に撮ってあげようか?時代劇の悪代官にそっくり」
「遠慮しておきます」
そう私の言葉をさらりとかわしてティーカップに口をつける。
ちなみに月島はコーヒーはあまり飲まない。いわゆる完全なる甘党だ。
「まぁ、恋人としか出来ないことは手繋いだりとかキスとかその辺じゃないの?」
「無難ですね」
「あんたに揚げ足取られないように言ったの」
つまらない、とでも言いたげに月島は小さく舌打ちした。君が目の前にしているのは2歳年上の先輩だということを忘れないでほしい。
私は短く息を吐いて、フンと鼻を鳴らした。その表情の変化に月島も気付いたらしく、小さく身構える。
先輩の方が一枚上手だということを、君に教えてあげようじゃないの。
そう意気込むと、私はにっこりと笑顔を作って、
「で、どうなの?彼女サンのことはどう思ってんの?」
とわざとらしく聞いてみた。察しの良い月島は不機嫌そうに目を細めた。
「…なんでここで言わなきゃいけないんですか」
「こらこら〜眉間にシワ寄ってるぞ〜」
私はメガネのブリッジを押し上げて眉間を人差し指でグリグリした。
やめてください、と首を振る月島。