第8章 Annoying!!【及川徹】
「……」
「ほら、そんな不機嫌な顔しないの!はい、スマイルスマイル」
この男、さらにウザさを増している。
私はくるくるになった自分の髪の毛を見ては、ため息をついた。
派手すぎる…。
甘い香りもするし、なんというか、恥ずかしい。
「髪型は確かに服装には合わないけど、そんなことで気を落とさないで?これからちゃんと選んであげるからさ!」
肩をポンポンと叩かれ、そのまま置かれた手を振り払う。
及川さんを邪険に扱うなんてひどいなぁ〜、とペラペラペラペラ…
全く、この口は本当に煩い。ガムテープでぐるぐる巻きにしてやろうか。
「せっかく可愛くしてもらったんだから、ほら、顔上げてよ?」
「あんたの口は本当減らないね…」
「そんな、照れるなぁ」
「全然褒めてないわ」
なんだこの会話。
「さ、お店に着きました!」
「…え」
このお店、雑誌で何度か見たことがある。
花柄やレースなどの女の子らしいスタイルだとかなんとか。
もちろん今までご縁のなかったタイプのお店。お邪魔したことすらない。
ウインドウに飾られたマネキンを見て唖然。あんなに短いスカート穿いたことない!なに、あのヒラヒラの服!
はい、回れ右。
「…こらこら、来た道引き返そうとしないの!」
「やだ無理!」
「じゃあ二択!俺にお姫様抱っこされながら店に入るか自分で歩くか。どうする?」
「歩きます」
お姫様抱っことか冗談でもふざけるな。