第6章 Love Game【及川徹】
「誰だっけ、シュウだっけ?あいつが一番好きなんでしょ?」
「そうだね、一番好き」
「ほらぁ…シュウに勝つまで俺は離れない」
「何言ってんの…」
ホールド・オンされた腕から逃れようとすると、グッと力を込められてしまう。
"絶対逃がさないよ"とでも言うような。
逃走を諦めて身を委ねると、腕に込められた力が優しくなる。
及川は、意外とこういうところがある。
最初は、女の子の扱いに慣れてるクソ男!とか思ってたけど、最近、意外と単純で一途なやつだと気付いた。
こういうところが、まぁ、嫌いじゃなかったりする。
「…確かに、シュウが好きだけど」
「うううう」
「三次元も含めたら及川が一番」
「…なんでそういうタイミングでそういうこと言うかな?」
はは、と聞こえてきた笑い声はどこかかたい。
身体をねじって及川を見ると、変な顔。役に入ってるような。
「『あの、キス…しても、いい?』」
まだゲームごっこ続いてるの?キスするときも?
私はプイッとそっぽをむいた。
「いや」
「『この煩い口は塞いでやる』」
「ドS嫌い」
「もう…美咲にキスしたいんだけど」
「ん」
ちゅ、と触れるだけのキス。
目を開けると、心底不思議そうな及川。
「いつも通りだとうまくいくなぁ」
「当たり前じゃない…」