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【ハイキュー!!】青春飛翔論

第1章 青春の終わり、そして卒業【澤村大地】


「大地ー」
「なんだよ」
「…嫌だったら、絶対言ってね?」

へ、と間の抜けた返事を聞きながら、私は首元に回した腕をきゅっと強めて、大地の首に抱きつく。体が密着して、大地が体を強張らせるのが分かった。でも、嫌とは言ってないから私はやめない。私は髪の毛を短く刈り上げたうなじに鼻をくっつけた。

「大地の匂いがする」
「…」
「嫌だったら嫌って言ってよ?」

だんまりを続ける大地。怒ってる?呆れてる?でも、何も言わないのはOKサインだと判断するからね。あとで嫌だったって言っても、私は悪くないもん。
変な理屈を頭の中で考えながら、ずぶずぶと大地の首元に顔を埋める。制服から柔軟剤の香りがする。鼻の奥、鼻腔の中で大地の匂いと混ざって、私の胸をトクンと鳴らした。唇で触れたいなぁって思って、怖くなってやめた。

…好きだなぁ。

口は閉じたまま、心の中でつぶやく。
家が近いから、小学校、中学、高校とずっと同じところに通ってた。こうして仲良くなったのは小学校高学年から?お互いバレーを始めて、それぞれ中学で主将になって。一緒に練習もしたし、バレーの話をいっぱいした。バレー以外の話もたくさん。
中学高校では、付き合ってるの?とかよく噂になってたけど、多分私たちはそんな甘酸っぱい関係じゃなかった。

一番の理解者

これが私たちを表す言葉で一番近いと思う。そこに男女の概念はなくて、そこにあるのはバレーと、一緒に過ごしてきた時間だけ。私は大地のことを信頼してたし、尊敬してたし、大切な存在だと思ってた。それを恋愛という2文字で片付けられるのは、少しムッとした。

もしかしたら、これは一般世間では"恋愛感情"というのかもしれない。大地と話がしたい。一緒に笑いたい。一番近くで触れていたい。
こんなの、いつからだっけ?もうそんなことも分からない。大地が好きだ。
でも、この"好き"が、恋愛のソレだとしても、友情のソレだとしても、私はどうでもいい。ただ大地と共有する時間が、幸せで、大切で、愛おししくて。

ーー青春は残酷だ。その時間も、刻々と終わりをちらつかせる。"永遠"など、最初からないと。そんなものは、まやかしだと。
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