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【ハイキュー!!】青春飛翔論

第4章 変わらぬ景色、変わりゆく時【西谷夕】



「…そういう美咲は結構モテるよな」
「え?いや、そんなことないけど」
「あるんだよ。知ってるぞ、お前が告白されたことあるってこと」

横を見ると、ジト目でこちらを見てるものだから、バーカと額を小突いた。
大袈裟に、痛ぇー、と反応するのはいつものこと。
…でもさ、と夕は言葉を続けた。

「付き合うって何すんだろうな」

青みが強かった空も、いつの間にか赤に塗り替えられて、すっかり夕暮れ時だ。
時間が経つのは早い。夕といる時間は特に。
振り返れば小学生の記憶がすぐに甦るのに、気付けば私たちは高校生だ。

「そりゃ…デート、とか?」
「デートって何すんだよ」
「買い物とか…映画?」

小学校6年生のとき、移動教室で告白大会じみたものがあったのを思い出す。
でも一時的に盛り上がっただけで、所詮、私たちは小学生、子供だった。
けれど高校生にもなると、付き合うという言葉は、持つ意味がどんどん重くなって。

ザッと草が揺れる音がして、夕は上半身を起こした。その背中も、昔とは比べ物にならないくらい広くて、逞しくて。

「…ごめん、美咲」
「え?」
「お前宛の手紙、勝手に見ちまった」

…そっか、と私は力なく呟いた。

「お前が見ないフリとか、そういうのするなんて珍しいから何があったのか気になっちまって。それで見ちまった」
「うん」
「それで…俺が美咲を誘えば、お前には行かない理由が出来ると思って。…でも正直、断られたらってすっげ怖かった」

そういう夕の口調は、いつものような自信はなく、どこか弱々しい。

「断られるってことは、お前が告白を受け入れるってことになるだろ」

ーーお前は断れないやつだからさ。
私は苦笑いして頷いた。
夕は、やっぱり私の全部を知ってる。

「それが、嫌だったんだ」
「うん」

この季節には珍しく、爽やかな風が吹き抜けた。
土の匂い、草木の揺れる音、ひんやりとした地面、変わらない夕日が、幼い頃の感覚を呼び覚ます。
けれど、隣にいる彼は、もうあの頃とは違ってーー
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